学術活動

服薬指導の重点化の鍵は、薬剤師の自主向学性掲載媒体/アストラゼネカ医療関係者向けサイト -MediCannel-

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「調剤過誤対策、教育など各種委員会を軸に、服薬指導を強化」

— まず、ピノキオ薬局さんの人員体制について教えてください。

現在、栃木県内に29店舗出店しています。
会社としては、薬剤師は約100名、事務の方が約70名いる他、エリアマネージャーが3地区に一人ずつ、事務マネージャー、そして、各種委員会活動をしていますので、委員会ごとに取り締まるマネージャーがおります。
私は、教育を担当する学術教育マネージャーを請け負っています。

— 貴局は委員会活動が活発で、調剤過誤を防ぐための調剤過誤対策委員会、コストダウン削減の対策をとるコストダウン委員会などがあります。調剤過誤対策委員会とは何をなさっていますか。

例えば、バーコード調剤過誤防止システムを全店舗に取り入れ、薬剤師の調剤ミスを防いでいます。
全ての医薬品にバーコードが貼付し、薬剤師が処方を受けて調剤をするときにバーコードを読み込むと、万一異なっている場合に警告が出るシステムです。薬剤師の負担が減るだけでなく、スピーディーに出力されるので、患者さんを待たせることも少なくなり服薬指導に力を注げるようになりました。
ただ、チェックをバーコードだけに頼らず、監査もきちんとするようにはしております。

— 先生がマネージャーを務められている教育・学術委員会も大きな軸となっていますが、そもそも先生が、教育を担当されるに至ったのは、どういう背景がありましたか。

大学卒業後、病院薬剤師を2年、メーカーで7年間の学術を続けた後、育児と両立するために、地元の調剤薬局に転職しました。
ところが困ったことに、私は自分が勤務していたメーカーの薬ばかり勉強していたので、知識も全然なかったんです。
そこで、某教育会社が主催していた薬の勉強会に日曜日は必ず通いました。
そしてそこで得た知識を、店舗の薬剤師にも教えていくようになると、面白いことに薬剤師がみな服薬指導が楽しいと言い出し、店舗中が一致団結して盛り上がっていったんです。

— 入ったばかりなのに自らが他の薬剤師さんの発奮剤となられる、その行動力には頭が下がります。 そうした近藤先生のリーダーシップや向上欲が社長に買われて、新店舗の薬局長に任命されたのですよね。

しかし新店舗は処方箋が全然来ないので、とにかく患者さんの得になることを毎日毎日考えましたね。できる限り正確に、他の薬局より早く薬を出すために、自分は何分で調剤ができるのかを計ったり、定期的にメーカーさんを呼んで勉強会を開いたりと、患者様に自分ができることはないかと店舗中が一つにまとまり奮闘しました。自然と、知識量の多い薬剤師が増えていきました。
そうしたことから他の店舗からの教育の依頼を受けるようになり、「それならば差が出るといけないので全店舗等しく教育をしましょう、との社長命令で、3年前から私が専任で教えるようになりました。

「一年目と二年目に、すべてを学んでもらう覚悟で」

— すべては、先生が独学で始められたことに始まるのですね。 教育は、新人教育、二年目からの教育、コミュニケーション教育と分けられているそうですが、内容的にはどのように違うのですか。

一年目は薬剤と服薬指導の要となるコミュニケーションを教えます。
とにかく、何を聞かれても答えられるくらい薬剤を細かく覚えてもらいます。その際、薬の説明体系が非常にわかりやすい『今日の治療薬』という本を買ってもらい、本に載ってないことを教えていきます。コミュニケーションは、患者さんにこう聞かれた場合はどうするか、毎回例題を替え、4人1チームで喧々諤々と話し合ってもらいます。話し合いができるようになると、驚くほど服薬指導ができるようになるんですよ。
二年目からは、薬の知識が頭に入った状態で、2ヶ月に一度勉強会を行い、病態について学んでもらいます。今度は医師向けの本を各々で購入し、院内での診断方法、病気ごとの検査方法、急性と慢性とでの症状の違いなど、最新の治療法までを頭に叩き込んでもらいます。

— 最初の2年で随分、教育の力を入れられていますが、やはりこの“2年”で学びきることに意義があるのでしょうか。

これは私の体験がもとになっています。
社会人一年目の、病院に入ったばかりの頃、在学中よりずっと根詰めて勉強したんですね。そしてメーカーに移ってからは、自分が担当する薬以外は全く勉強しませんでした。
それが、調剤薬局に入ったとき、再度勉強しなくても、一年目に勉強した薬の知識や、体で覚えた調剤方法が、自然と思い出されてきたんです。年を経るごとになかなか覚えられなくなる中で、一~二年目に体得したことは本当に貴重だと実感しました。
それで、一年目はどんなに嫌われても絶対後で感謝されると信じ、力を入れています。

「薬剤師に刺激を送りこむことで、よりよい循環を」

— 卒業したての頃が一番知識も豊富ですし、やる気もあり、頭に入っていきますよね。薬剤師の方々の反応はいかがですか。

勉強会前と後では、明らかに変わりますね。
以前はドクターに電話で聞かれても、おどおどと自信なさそうに対応していたのが、すごく自信を持って答えるようになりました。
さらに、3年目の人が管理薬剤師になると、これまでは違うと思っていても先生の言いなりになっていたのが、間違いだとハッキリと主張できるようになり、ますます先生の信頼を得られるようになります。先生に信頼されてくると、その様子を見ていた上の年代の薬剤師たちが、我も我もと競うようにして勉強会に参加したがり、どんどん優秀な薬剤師が生まれます。
すごくいい循環になっていますね。

— そうした向学心ある薬剤師さんのために、様々な勉強会を設けられていると伺いました。

年に2回、春と秋の日曜に、全社員を集めて「サンデー勉強会」開催しています。大学病院の医師、薬学部教授、専門家を講師に招いて、症例検討などを行うものです。
ここで薬剤師が医師に質問をすると、医師は「そんなことまで知っているのか」と驚かれ、信頼関係がまた強くなりますし、褒められた薬剤師もまたやる気になる、という素晴らしい循環も見られますね。
そして、彼らのやる気をもっと助長したいと思い、入社二年目以降の薬剤師を招いた「スキルアップ勉強会」、さらにもっと学びたいという薬剤師には「ハイレベル勉強会」を開き、希望者にはどんどん高度なことを学べる機会を作っています。

— 勉強熱心な薬剤師さんが増えるにつれ、貴局での学会発表もどんどん盛んになられていくのですね。

ええ。今の三年目の子が、「一緒に学会発表をやりましょう」と積極的に話を進めてくれたとき、胸に迫り来るものがありました。
わが薬局では、学んだら、次は下に教えていく、という引継ぎ教育も行っているので、彼は、今新人を熱心に育ててくれています。

— やはり教わるだけでなく、いったん吸収したことを講師として教えていくことによって、どんどん知識を入れていかれるのですね。ただ、すべての先生がみな優秀とは限らないと思いますが、途中で躓いてしまう薬剤師さんにはどのようにフォローしていらっしゃるのですか。

すべての薬剤師に私の携帯の番号とメールアドレスを伝えていますので、勉強会後、または服薬指導中に疑問がわいたときは、例え夜でも、すぐ私に連絡が来ます。
また、全店舗の新入社員のところを周り、一人ずつ話をします。こないだの勉強会でわからないことはあるか、テストで×だったところは、なぜこう答えたのかなど、手厚くフォローします。
さらにそのとき、自分が見たこともない処方箋を貼っておいて、この処方が来たらどういう調剤をするか考えてもらい、なぜそう考えるのか、他の考え方もあればそれを教えます。ノートの冊数が多い薬剤師には、「この子はこんなにノートがある。ちゃんと復習しているのよ」と、他の多くの薬剤師の前で褒めてあげます。
すると、褒められたほうは嬉しくてまたやる気になりますし、他の薬剤師は競争心を煽られて、さらにがんばってくれます。

— 相乗効果ですね。でも何よりも、「褒めて伸ばす」という先生の優しく母性にあふれる教育方法が、薬剤師さんたちのやる気を上手く引き出しているのでしょう

みんな、子どもみたいでとても可愛いなあと愛情を持ちつつも、ダメなものはダメともハッキリ言いますよ。
嫌われても、あとでビッグになってもらいたいですから。

「子育てこそ、自身の勉強意欲の発奮剤に」

— 子育てをしていらっしゃる先生だからこその教育方法ですね。

逆に、私の発奮剤は、子どもなんですよ。子どもがすごくがんばっているのを見ると私もがんばろうと思います。
子どもに尊敬してもらえるようになりたい、この子を育てていくためにも自分も仕事をがんばりたい、と、育てながらいろんなやる気がみなぎってきます。
子育てしながら仕事をすることに躊躇いをもたれる方も多いですが、ぜひ挑戦してほしいですね。

— 先生の発奮剤が、実はご自身のお子様でいらっしゃったのですね。 ちなみに先生ご自身は、普段どのようにして情報を得られているのですか。

本とテレビですね。
医師が読む専門誌を定期購読で自宅に取り寄せ、薬の添付文書に改訂があれば、その都度メモを残し、新しくその薬が入ったとき対応できるようにしています。最新情報は常に取り入れたいですよね。
そして、NHKの『きょうの健康』も、新入社員時代から欠かさず見ています。一般向けのテレビですから、非常にわかりやすく説明されていて、すっと頭に入りますし、服薬指導のときもテレビで聞いた言葉のほうが使いやすいんですよね。難しい本の言葉よりも。
「今年の冬のインフルエンザはこうだ」など、テレビならではの最新情報もありますので、ぜひ参考に見ていただきたいです。

— 最後に、先生の夢をお聞かせ願えますか。

できればもう一度勉強し直したいです。
最初の病院で精神科の病棟にいたこともあり、そこで学べなかった精神的な部分の考え方も学びたいですし、ずっと理系畑におりましたので、理系以外の世界に足を踏み入れて、見識を広めたいです。
例えば、先日子どもの授業参観のときに初めて華道を学んだのですが、とても新鮮でした。こういうことを知っているとこんなにキレイに花が生けられるんだ、と。勉強するって、本当に楽しいですよね。
これまで培ってきた薬剤師の知識と、何でもいいのですが新しい知識とがうまく合わさって、何か新しいものを生み出していければ、素晴らしいですね。

近藤先生、本日はありがとうございました。