ピノキオ薬局は、栃木県内を中心に大型調剤薬局を主とした店舗を展開している保険調剤薬局です。

第47回日本薬剤師会学術大会(山形)

第47回日本薬剤師会学術大会(山形)(H26.10.12・13)

「生物学的製剤の適正使用と副作用の早期発見の推進」
「薬局での単純疱疹患者に対する早期受診・感染予防指導と、新剤形が患者に与える影響について~バラシクロビル粒状錠を例にして~」
「チャンピックスを用いた禁煙治療の現状と服用継続率向上を目的とした服薬コンプライアンス・外的要因の関連性調査」
「薬剤師が小児中耳炎患者のアドヒアランス向上のためにできること」
「抗血小板薬適正使用チェックシートを用いた副作用早期発見例と副作用発生時の対応指導の成果について」

「生物学的製剤の適正使用と副作用の早期発見の推進」

加藤誠一1、鈴木方子1、 田中 直哉2、近藤 澄子1、矢島 毅彦3、田中 秀和1 (株式会社ピノキオ薬局1 株式会社カロン2 NPO法人Health Vigilance研究会3)

目 的

生物学的製剤が臨床導入されて十数年がたち、院外処方せんとして薬局で調剤する機会は増えている。生物学的製剤は注射手技に問題がないか確認することや重篤な副作用が発現する可能性も高いことから、院外処方せんを応需する薬局薬剤師が安全管理上の役割を担う必要がある。しかし、調剤薬局における患者との接点は、来局時の1日しかないため患者情報を得る機会は少なく、薬局薬剤師は患者一人一人の状態に応じた服薬指導が十分にはできていないのが現状である。
そこで、現状把握するための初回アンケート(以下アンケート)と自己注射手技確認チェックシート(以下チェックシート)による調査を行うことにより、副作用(薬局で確認可能な11項目)発現の有無と、薬剤を適正に使用できているかどうかを確認し、有用な結果が得られたので報告する。

方 法

平成25年11月以降、ピノキオ薬局自治店、南河内店に来局した患者のうち、エンブレル使用リウマチ患者全9名、ヒュミラ使用クローン病患者全13名を対象とし、アンケートとチェックシートを用いた聞き取り調査をおこなった。アンケートは調査後初来局時に行い、チェックシートは、来局ごとに毎回使用した。

結 果

確認した副作用は全てグレード1であったが、調査した11項目すべての副作用を確認した。アンケートを実施する前と比べ、副作用の確認件数は有意に増加した。
副作用発生時の対応として、半数以上の患者は、症状が軽度であったためか、医師にも報告していなかった。また、副作用の発現リスクを理解していた患者の割合は約7割であった。
自己注射手技にあいまいな点を抱える患者は約3割であったが、適正な使用方法を説明し、適正使用を推進することが可能となった。

考 察

臨床試験時のデータと比較しても高率で副作用と思われる症状の発現が確認された。服薬指導で聞き取りが十分にできていなかったケースがあることを認識し、アンケートによる副作用確認の有効性を実感した。
自己注射は、医師が手技の確認や副作用の説明などを厳格に行ったうえで導入され、薬局においても確認されているが、あいまいな点をかかえたまま使用している患者が散見されたことから、このようなチェックシートを活用し自己注射の手技においても、適正使用のために薬局薬剤師が係るべき部分が多いことを改めて認識した。

薬局での単純疱疹患者に対する早期受診・感染予防指導と、新剤形が患者に与える影響について~バラシクロビル粒状錠を例にして~

1磯 和宏、1近藤 澄子、2田中 直哉、3矢島 毅彦、1田中 秀和 1(株)ピノキオ薬局 2(株)ピノキオファルマ 3NPO法人 Health Vigilance研究会

目的

単純疱疹は単純ヘルペスウイルスの感染により引き起こされる。感染力は強く、内服薬の早期服用と感染予防が重要である。しかし、再発毎に毎回受診する患者は、2割に満たないという報告もある。また、患者の感染予防に対する意識や実施状況は不明である。そこで、再発時の対応と感染予防に対する意識調査を行うこととした。
また、単純疱疹治療薬バルトレックス®は、長径が18.5mmと大きく、患者のアドヒアランスに大きな影響を与える。ジェネリック医薬品として大きさを改良した粒状錠という新剤形が販売されたため、新剤形に対する患者の意識調査を行ったので報告する。

方法

平成26年3月以降ピノキオファーマシーズ宝石台店に来局した単純疱疹患者のうち、バラシクロビル錠が処方された全患者にアンケートを実施した。アンケート項目は、単純疱疹に関する過去の指導内容、病態の理解、発症時の対応、感染予防、薬の大きさ、飲みやすさ、新剤形についてなどとした。理解してほしい内容に関して、店舗で作成した指導箋を用いて再指導した。次回来局時に、服用状況、飲みやすさ、指導内容の理解について二回目アンケートを実施した。

結果

再発患者は、新規発症患者と比べて早期受診していることが示された。再発患者のうち、毎回受診する患者は約2割であり、その理由は、忙しさや症状を我慢してしまうことであった。また、過去に感染予防の説明を受けていた患者は約3割であり、実際に行われた感染予防は不十分であった。指導箋を用いて指導を行った結果、内服薬の必要性と感染予防の意識は高まった。
また、バルトレックス®の大きさを気にしている患者は6割であり、そのうち約半数の患者は、飲みやすさや携帯性が改良されれば、錠剤以外でもよいと考えていた。新剤形の粒状錠は今まで薬が飲み難いと感じたことのある患者でも飲みやすいと感じた方がいた。

考察

薬剤師の指導により、再発時早期受診が進むことは、バラシクロビル錠の効果を最大限に発揮させ、感染予防が進むことは、ウィルスの蔓延予防につながり、患者貢献できたと考えている。バルトレックス®のように大きく、服用が困難な薬剤では、アドヒアランス向上に新剤形が役に立つ可能性がある。今後、患者の服用問題を解決するためにも、薬剤師として注目していく必要があると考えている。

「チャンピックスを用いた禁煙治療の現状と服用継続率向上を目的とした服薬コンプライアンス・外的要因の関連性調査」

株式会社ピノキオ薬局1、株式会社ピノキオファルマ2、NPO法人Health Vigilance研究会3 ○篠原 祐樹1、小椋 章次1、黒川 鮎子1、佐山 直子1、伊藤 麻衣子1、田中 直哉2、近藤 澄子1、矢島 毅彦3、田中 秀和1

目的

チャンピックス®はニコチン製剤と比較して高い禁煙成功率が期待できる(ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査では成功率49%)。12週間服用前に服用中止した場合、成功率は著しく低下(8週間服用では同25%)するが、12週間継続できる患者は多くない。今回、チャンピックス®の服薬状況や患者背景を調査し、継続率を上げる方法を検討した。チャンピックス®は車の運転に関して注意喚起されていることから、車の使用状況も併せて調査した。

方法

2012年5月21日~2014年5月21日にピノキオ薬局3店舗に来局したチャンピックス®服用全患者(150名)の薬剤服用歴を調査し、年齢、性別、喫煙本数、禁煙状況、副作用、併用薬と服薬状況の関連性を調べた。
また、実際に服薬指導している内容、服用状況に関して薬剤師アンケートを実施した。

考察

12週間継続できた患者の割合(以下、継続率)は37%(男35%、女40%)であった。初回離脱は20%であった。禁煙以外の理由もあって医療機関を受診している患者では、継続率は46%であり、禁煙治療のみで受診している患者では32%であった。また、服用期間中に禁煙できた患者の継続率は49%であった。年齢、喫煙本数、副作用の有無と継続率に相関はなかった。禁煙成功が不明の患者を除き、禁煙成功率は54%であった。
副作用の発現率は30%(上部消化器症状22%、腹部膨満感・便秘6%、眠気3%など)であり、減量は10件、中止は0件であった。
服薬中に車を運転した患者の割合は92%であり、そのうち眠気を感じた割合は4%であった。精神疾患にて治療中の患者への投薬は13件であったが、原疾患の悪化はなかった。

考察

初回離脱率は高く、服用継続には初回指導が重要となる。禁煙治療のみで受診の患者では、離脱後は指導できなくなるため、継続は難しく、喫煙してしまっても受診継続させることが必要である。服用期間内に禁煙できた患者では継続率が高いことから8日以降になってしまっても喫煙を辞めさせる必要性が示された。
車社会において運転させないことは非現実的であり、処方変更が最優先だが、服用の場合には患者の同意を得るとともに、眠気を感じるときには治療継続の可否を判断すべく連絡するように徹底する必要がある。

小児中耳炎患者のアドヒアランス向上を目的とした服薬指導ツールの作成 ―服薬に関する年齢別問題点の改善―

青木一恭1、諸橋卓治1、阿部由美子1、坂本恵理1、斉藤芽久1、小貫沙織1、田中直哉2、近藤澄子1、矢島 毅彦、田中秀和1

目 的

小児では急性中耳炎の再発や慢性化が問題となっている。要因の1つに急性中耳炎に対するアドヒアランス(以下AD)の低下(症状がおさまると服薬をやめてしまう、粉やシロップの味が苦手、幼稚園では飲ませてくれない)が挙げられる。小児の中耳炎患者の実態を調査し口頭再指導を行うことで、薬剤師がADを向上させ、服薬に関する問題点を改善できることを昨年報告した。今回、調査を継続するとともに、服薬指導ツールとしてQ&A形式の小冊子を作成することとした。

方 法

2013年5月1日から9月30日に、急性中耳炎の症状(耳痛、発熱、耳垂れ)で来局した小児53例を対象に、来局回数、服薬に関する問題点(副作用で飲めない、味が苦手、幼稚園など環境のせいで飲めない、飲み続けることが重要とわかっていない、点耳がうまくできない)、合併症(アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎、インフルエンザ)の有無、抗生剤や併用薬について投薬時に調査し、治療効果との関連性を調べた。小冊子は、店舗に配置するとともに、質問があったとき、服薬指導時に問題点が見つかったときに個別に配布して指導した。

結 果

過去に中耳炎を経験している割合は66%であった。服薬に関する問題点の内訳は、点耳がうまくできないが31%、味が苦手が11%、幼稚園など環境のせいで飲めないが9%であった。年齢別では、2歳以下では点耳がうまくできないが58%と最も多く、幼稚園に通う3~6歳では耳痛の訴えが96%と最も多くなるが、点耳がうまくできない、環境のせいで飲めない、薬の味が苦手が16%で、小学生では薬が飲めないという症例は減少した。抗生剤の使用状況はアモキシシリンが37例と最も多く、次いでクラリスロマイシン11例、セフジトレン4例などであり、ほとんどの症例で初回から使用されていた。服薬に関する問題点は年齢により異なることから、小冊子には対象となる年齢を記載し、重点的に指導した。薬剤師は、服薬指導ツールを使用することにより短時間で必要な情報を伝えることができた。

考 察

薬をうまく服用・使用できない理由が年齢により異なることを踏まえ、改善策の提案を服薬指導ツールにて行うことにより、より必要としている患者に必要な情報を確実に伝えることができ、症状の改善・再発、慢性化防止により貢献できたと考えている。

抗血小板薬適正使用チェックシートを用いた副作用早期発見例と副作用発生時の対応指導の成果について

関 靖文、吉澤 知美、田中 直哉、近藤 澄子、矢島 毅彦、田中 秀和

目 的

脳卒中ガイドライン(2009)において、非心原性脳梗塞の再発予防には、抗血小板薬が強く推奨されている。しかし、抗血小板薬を高齢者に投与する際には、出血リスクが高まるため注意が必要である。一方、飲み忘れや自己判断による中断で脳梗塞再発リスクが高まる可能性も考えられており、薬局薬剤師が安全管理上の役割を担う必要性がある。そこで、薬局薬剤師が積極的に介入しアドヒアランスを向上させること、副作用の早期発見と適切な対処ができるようさせることを目的とし、抗血小板薬適正使用チェックシートを作成することとした。

方 法

チェックシートには、服用開始日/服用期間/合併症(併用薬)などの初回確認事項、休薬に関する理解、飲み忘れ時の対応、副作用(皮下出血、鼻血、口腔内出血、創部・採血部止血困難、消化器系出血、泌尿器系出血)など記載する欄を設けた。副作用はグレード分類を行い、グレードごとに対応方法を作成した。
H25.12.18以降ピノキオ薬局プラザ店に来局した65歳以上の非心原性脳梗塞患者全176人(アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール服用患者)を対象とした。服薬指導時にチェックシートに問診方式で記載し、理解度や副作用に関しては、来局ごとに確認した。出血時や飲み忘れ時の対応法、周術期の休薬について指導せんを作成し指導した。

結 果

周術期の休薬の必要性は56%、飲み忘れたときの対応は86%の患者が理解していたが、理解していなかった患者のうち79%は指導後改善した。泌尿器系出血以外の項目(皮下出血、鼻血、口腔内出血、創部・採血部止血困難、消化器系出血)において副作用が生じた(176名中33名39件)。そのうち次回処方医へ報告するように指導した人数は31名であり、受診勧告は2名(歯科止血が1件、圧迫で経過観察1件)、脳出血による処方削除が1件であった。副作用の発現と年齢、服用年数、合併症(高血圧、糖尿病、脂質異常症)に、相関はなかった。

考 察

出血副作用発現時の対応を指導していないと自己判断による中止や減量などにつながるため、これを防止する薬剤師の役割の重要性が示された。今回の取り組みにより、休薬、飲み忘れ時、出血時の対応方法について、理解度が上がったことから、アドヒアランス向上に貢献できたと考えている。