学術活動
第18回薬局学会学術総会 (2024年11月2日・3日)
薬局学会にて,4演題発表してきました。
マイナ保険証始まる!〜保険薬局で見えてきた問題点と活用状況〜
寺戸靖
目的
マイナンバーカード(以下、カード)は医療情報を有効に活用する国の施策として普及が推進され、現行の保険証廃止が本年12月に決定している一方、薬局での4月の利用率は全国平均で6%程度である。当薬局ではカード開始早期から使用環境を整備し、カード利用の掲示や声掛けに積極的に取り組んできた。その結果2024年5月の利用率は全国平均よりも高い25.9%(3.7%~50.6%)であるが、さらに利用を推進することが求められる。そこで、カードの利用状況と利用率向上を阻む要因を検討した。
方法
2023年10月から2024年5月に来局した患者について、当薬局の薬剤師164名・医療事務103名に利用状況に関するアンケート調査を行った。
結果
カードを活用した項目と人数は、薬剤師が併用薬95名(57.9%)、健康診断結果39名(23.7%)、医療事務がオンライン資格確認69名(70.0%)であった。具体的な活用例は、健康診断と薬剤情報から処方薬の禁忌疾患や重複する同効薬が判明し、処方変更となったや他院で骨粗鬆症治療薬(注射)をしている患者にビスホスホネート製剤が処方され、処方削除となった等があった。対応に苦慮する事例を経験した人数は、カードに否定的で持参しない159名(59.6%)、カードの持参忘れ104名(39.0%)、情報更新が遅いため最新情報の閲覧不可98名(36.7%)、情報閲覧提供の拒否69名(25.8%)であった。患者から寄せられた意見は、毎回提示するのは面倒96名(36.0%)、安全性が心配30名(11.2%)等が多かったが、お薬手帳がなくても併用薬がわかるので安心との意見もあった。
考察
保険薬局でカードを利用することにより、情報確認をスムーズに行うことが可能となり、適切な薬物治療の提供に繋がっている。しかし、カードに否定的である、カードの持参を忘れる、情報更新の迅速性等解決すべき問題点がある。利用率上昇のためには、カードへのイメージ向上、理解のための更なる丁寧な周知説明が必要であることが示唆される。
薬局で行う心電図チェック、不整脈早期発見の取り組み ~健康サポート薬局で不整脈を見つけよう~
近藤澄子
目的
2024年調剤報酬改定において心不全のフォローアップが組み込まれるなど、心不全患者の療養指導において薬局薬剤師が果たす役割は重要である。
弊社では以前から心不全の管理に着目し、2022年に社内認定心不全スペシャリスト制度を立ち上げた。動画研修やWebのグループ研修等を実施して6名が認定され、その中から2021年に創設された日本循環器学会認定心不全療養指導士の取得者が誕生した。
社内認定薬剤師の心不全患者への貢献度を明らかにするため、症例を収集し調査した結果を報告する。
弊社では以前から心不全の管理に着目し、2022年に社内認定心不全スペシャリスト制度を立ち上げた。動画研修やWebのグループ研修等を実施して6名が認定され、その中から2021年に創設された日本循環器学会認定心不全療養指導士の取得者が誕生した。
社内認定薬剤師の心不全患者への貢献度を明らかにするため、症例を収集し調査した結果を報告する。
方法
2023年5月〜2024年4月の間に、社内認定薬剤師が心不全患者に対応した内容を症例報告書に記載させて収集し、その内容を精査した。
報告書のフォーマットには、減塩・食事・運動・服薬状況・自覚症状等の確認や介入内容の記載欄を設けた。また患者対応に必要な資材等を認定者に提供した。
報告書のフォーマットには、減塩・食事・運動・服薬状況・自覚症状等の確認や介入内容の記載欄を設けた。また患者対応に必要な資材等を認定者に提供した。
結果
34例の報告があり、内訳はステージA3名、B7名、C24名であった。ステージCの24名中19名は利尿剤を服用していたが、そのうち4名は利尿剤服用にもかかわらず浮腫が認められた。また労作時息切れは2名に認められた。その中で、浮腫が認められた患者の一部経過を紹介する。
症例1:88歳女性。ステージC。心不全増悪により2回の入院歴があるが、病識不足と自己管理の認識不足を認めたため、セルフチェックを中心に指導した。その後、浮腫の悪化時に速やかに受診し対応できた。
症例2:89歳女性。ステージC。患者に心不全の認識はなかったが、NT-proBNPが1000を超えており心不全の可能性を説明。塩分チェックシートを実施し減塩指導、その後の検査で推定1日食塩摂取量が7.0gから5.3gに減少し、浮腫は改善した。
症例1:88歳女性。ステージC。心不全増悪により2回の入院歴があるが、病識不足と自己管理の認識不足を認めたため、セルフチェックを中心に指導した。その後、浮腫の悪化時に速やかに受診し対応できた。
症例2:89歳女性。ステージC。患者に心不全の認識はなかったが、NT-proBNPが1000を超えており心不全の可能性を説明。塩分チェックシートを実施し減塩指導、その後の検査で推定1日食塩摂取量が7.0gから5.3gに減少し、浮腫は改善した。
考察
心不全患者への薬局薬剤師の積極的な介入により、症状改善や悪化時の早期対応につながることが示された。
心不全療養指導士を中心に心不全患者へ更に貢献し、心不全の悪化・再入院の予防に寄与したいと考える。
心不全療養指導士を中心に心不全患者へ更に貢献し、心不全の悪化・再入院の予防に寄与したいと考える。
専門医療機関連携薬局の果たすべき役割とは?〜トレーシングレポートの実施状況か ら考える〜
加藤誠一
目的
専門医療機関連携薬局は、がん患者の薬物療法において病院と密な連携を図り、質の高い服薬指導や情報共有を行うことが求められている。
弊社では2022年8月に専門医療機関連携薬局が誕生し、医療機関との連携強化に努めている。今回、専門医療機関連携薬局で行った1年間の情報共有の成果と展望について報告する。
弊社では2022年8月に専門医療機関連携薬局が誕生し、医療機関との連携強化に努めている。今回、専門医療機関連携薬局で行った1年間の情報共有の成果と展望について報告する。
方法
2023年1月〜12月の期間に、医療機関に報告したがん患者のトレーシングレポート(以下TR)を集計し内容を精査した。
結果
1年間でがん患者関連のTRは144件提出された。なお、残薬やプロトコルによる変更等の報告は除外した。
内訳は乳がん90件、大腸がん12件、胃がん11件、前立腺がん8件、すい臓がん5件、その他のがん種18件であった。
144件中、処方提案が22件実施され18件で処方変更につながった。また、副作用発現を確認して受診勧奨を行い、受診した例は3件であった。そのうちの1例を紹介する。
症例:71歳女性乳がん、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセル療法。化学療法実施後7日目の電話フォローアップ(以下TF)で、下痢が悪化し摂食が難しくなっていると聞き取った。主治医に連絡し、受診するようにと返答を得たため患者に伝達した。受診までは経口補水液で水分摂取を試みるよう指示しTRで報告した。受診後そのまま入院となった。輸液管理にて状態は安定し、次回の治療では薬剤が変更となった。
内訳は乳がん90件、大腸がん12件、胃がん11件、前立腺がん8件、すい臓がん5件、その他のがん種18件であった。
144件中、処方提案が22件実施され18件で処方変更につながった。また、副作用発現を確認して受診勧奨を行い、受診した例は3件であった。そのうちの1例を紹介する。
症例:71歳女性乳がん、ペルツズマブ+トラスツズマブ+ドセタキセル療法。化学療法実施後7日目の電話フォローアップ(以下TF)で、下痢が悪化し摂食が難しくなっていると聞き取った。主治医に連絡し、受診するようにと返答を得たため患者に伝達した。受診までは経口補水液で水分摂取を試みるよう指示しTRで報告した。受診後そのまま入院となった。輸液管理にて状態は安定し、次回の治療では薬剤が変更となった。
考察
今回の調査では、処方提案の80%以上が次の処方に反映されており、処方変更に至る割合は全体の12.5%であった。薬局薬剤師のTFおよびTRの報告が有用であったことが示唆される。
さらにTFによる副作用の聞き取りによって緊急受診が必要となった例が約2%存在した。これは抗がん剤使用患者に対して、副作用管理の面で大きな貢献を果たしたといえる。
在宅での抗がん剤治療が一般的となった現代において、専門医療機関連携薬局の担う役割は更に重要になると考える。
さらにTFによる副作用の聞き取りによって緊急受診が必要となった例が約2%存在した。これは抗がん剤使用患者に対して、副作用管理の面で大きな貢献を果たしたといえる。
在宅での抗がん剤治療が一般的となった現代において、専門医療機関連携薬局の担う役割は更に重要になると考える。
目 的
2024年調剤報酬改定において心不全のフォローアップが組み込まれるなど、心不全患者の療養指導において薬局薬剤師が果たす役割は重要である。
弊社では以前から心不全の管理に着目し、2022年に社内認定心不全スペシャリスト制度を立ち上げた。動画研修やWebのグループ研修等を実施して6名が認定され、その中から2021年に創設された日本循環器学会認定心不全療養指導士の取得者が誕生した。
社内認定薬剤師の心不全患者への貢献度を明らかにするため、収集した症例を報告する。
弊社では以前から心不全の管理に着目し、2022年に社内認定心不全スペシャリスト制度を立ち上げた。動画研修やWebのグループ研修等を実施して6名が認定され、その中から2021年に創設された日本循環器学会認定心不全療養指導士の取得者が誕生した。
社内認定薬剤師の心不全患者への貢献度を明らかにするため、収集した症例を報告する。
方 法
2023年5月〜2024年4月の間に、社内認定薬剤師が心不全患者に対応した内容を症例報告書に記載させて収集した。
報告書へは、減塩・運動・服薬状況・自覚症状の確認状況、増悪時の対処、病識等の現状やその介入内容を記載することとした。そして介入事項がその後の経過に有効であった症例を抽出した。
報告書へは、減塩・運動・服薬状況・自覚症状の確認状況、増悪時の対処、病識等の現状やその介入内容を記載することとした。そして介入事項がその後の経過に有効であった症例を抽出した。
結 果
34例の報告があり、内訳はステージA3名、B7名、C24名であった。ステージCの24名中何らかの症状があり、特に注意が必要と思われる患者は浮腫4名、労作時息切れ2名であった。その中で、浮腫を確認し対応した患者の一部経過を紹介する。
症例1:88歳女性。ステージC。心不全増悪により2回の入院歴があるが、病識不足と自己管理の認識不足を認めたため、セルフチェックを中心に指導した。その後、浮腫の悪化時には速やかに受診することができた。
症例2:89歳女性。ステージC。患者に心不全の認識はなかったが、NT-proBNPが1000を超えており心不全の可能性を説明。塩分チェックシートを実施し減塩指導、その後の検査で推定1日食塩摂取量が7.0gから5.3gに減少し、浮腫は改善した。
症例1:88歳女性。ステージC。心不全増悪により2回の入院歴があるが、病識不足と自己管理の認識不足を認めたため、セルフチェックを中心に指導した。その後、浮腫の悪化時には速やかに受診することができた。
症例2:89歳女性。ステージC。患者に心不全の認識はなかったが、NT-proBNPが1000を超えており心不全の可能性を説明。塩分チェックシートを実施し減塩指導、その後の検査で推定1日食塩摂取量が7.0gから5.3gに減少し、浮腫は改善した。
考 察
心不全患者への薬局薬剤師の積極的な介入により、症状改善や悪化時の早期対応につながることが示された。
心不全療養指導士を中心に心不全患者へ更に貢献し、心不全の悪化・再入院の予防に寄与したいと考える。
心不全療養指導士を中心に心不全患者へ更に貢献し、心不全の悪化・再入院の予防に寄与したいと考える。