学術活動
第10回日本薬局学会学術総会(京都国際会館)(平成28年10月29日・30日)
オピオイドに対する患者意識調査 ~オピオイドの正しい理解によるアドヒアランスの改善と薬薬連携の必要性~
高額医薬品フォルテオの有用性を促進させる薬剤師の関わり方 ~注射手技の改善と継続率に関わる因子の解析~
新作用機序ベルソムラの実態調査から見えた使用法の提案 ~ベンゾジアゼピン系薬剤から切り替え時の問題点について~
【国内初】外用液タイプの爪白癬治療薬「クレナフィン爪外用液」の有用性検討 ~薬剤師介入による有用性向上と内服薬との比較~
高額医薬品フォルテオの有用性を促進させる薬剤師の関わり方 ~注射手技の改善と継続率に関わる因子の解析~
新作用機序ベルソムラの実態調査から見えた使用法の提案 ~ベンゾジアゼピン系薬剤から切り替え時の問題点について~
【国内初】外用液タイプの爪白癬治療薬「クレナフィン爪外用液」の有用性検討 ~薬剤師介入による有用性向上と内服薬との比較~
オピオイドに対する患者意識調査 ~オピオイドの正しい理解によるアドヒアランスの改善と薬薬連携の必要性~
各務 温1、田中 直哉2、 近藤 澄子1、矢島 毅彦3、田中 秀和1 (株式会社ピノキオ薬局1 株式会社カロン2 NPO法人Health Vigilance研究会3)
目的
がん性疼痛におけるオピオイドについて、不安、依存性、精神症状の発症など心配し、服用せずに我慢する患者も少なくない。悪いイメージや間違った知識を持っている患者に対し服薬指導することでアドヒアランスを改善させ、QOLを向上させるために意識調査をした。
目的
2015年12月から2016年3月までに、ピノキオ薬局陽南店にてオピオイドを調剤した全22名に対しアンケートを行い、必要に応じて当薬局作成の指導箋を用いて指導した。
目的
項目①「医療用麻薬を飲みたいですか?」に対して、「飲みたい」54.5%、「どちらでもない」27.3%、「飲みたくない」18.2%であった。②「医療用麻薬をどう思っていますか?」は、「安心」50%、「わからない」27.3%、「不安」22.7%であった。また、以下の項目に関して「知っている」と答えた割合は、③「依存性が生じにくい」72.7%、④「精神障害が出にくい」63.6%、⑤「痛みや苦しみを我慢すると体へ悪影響が出る」81.8%、⑥「痛みや苦しみを我慢すると今後の治療へ影響が出る」86.4%であった。項目③~⑥で「知っている」と答えた患者のうち、項目②で「安心」と答えた患者の割合は、③62.5%、④71.4%、⑤55.6%、⑥52.6%で、「知らない」と答えた患者に対する割合に比べて高かった。
目的
知っている」と答えたうち、「安心」と答えた患者が多いことから、オピオイドの正しい知識を理解させることは重要と考える。指導箋を用いた指導後の再調査は、十分な回答数を得られなかった。そこで、現在薬薬連携の一環として、地方独立行政法人栃木県立がんセンターでオピオイド初回服薬指導を受けた患者に対して同センター作成の「痛みの日記」を配布し、オピオイドの自己管理を適切に行えるよう取組んでいる。これらの情報を共有し連携すれば、QOL向上に貢献できると考える。
高額医薬品フォルテオの有用性を促進させる薬剤師の関わり方 ~注射手技の改善と継続率に関わる因子の解析~
大塚祥貴1、 田中 直哉2、近藤 澄子1、矢島 毅彦3、田中 秀和1 (株式会社ピノキオ薬局1 株式会社カロン2 NPO法人Health Vigilance研究会3)
目的
自己注射型のPTH製剤が臨床導入され5年が経過した。PTH製剤の治療効果は優れているが、24ヶ月という治療期間を継続できる患者は多くない。そこで、患者手技確認表と患者背景確認チェックシートと副作用チェックシートを作成し、本剤使用の実態調査をした結果、注射手技の順守、患者背景と継続率との関連性、副作用の発現の有無について有用な結果が得られたので報告する。
方法
2015年9月以降、ピノキオ薬局グループに来局した患者のうち、フォルテオ使用骨粗しょう症患者全46名を対象とし、背景確認シート(初来局時)、手技確認表と副作用シート(来局ごと)を用いた聞き取り調査を行った。
結果
注射手技の確認ができたのは43名であった。そのうち問題を抱える患者は32.6%であった。問題個所の重点的指導により、87.5%に手技の改善が見られた。守られなかった項目としては、「空うち時に上部に気泡をためる」23.3%、「注射部位をもまない」14.0%などであった。
継続率は、24ヶ月満了もしくは継続中が71.7%、中断は28.3%であった。継続率は、使用開始の理由が骨折、他の骨粗鬆症薬を使用している患者では高く、使用期間が24ヶ月であると理解している患者では低かった。
副作用の発現率は13.0%と低く、高いものでも起立性低血圧の4.3%であった。副作用により治療を中断したのは4.3%であった。
継続率は、24ヶ月満了もしくは継続中が71.7%、中断は28.3%であった。継続率は、使用開始の理由が骨折、他の骨粗鬆症薬を使用している患者では高く、使用期間が24ヶ月であると理解している患者では低かった。
副作用の発現率は13.0%と低く、高いものでも起立性低血圧の4.3%であった。副作用により治療を中断したのは4.3%であった。
考察
注射手技が守れている患者は多くはないが、薬剤師の指導により手技は改善した。副作用頻度は低いものの、治療継続率は71.7%と高くはない。これは、高額薬剤の長期使用に一因があるものと思われる。このことは、病気の重症度や治療の必要性を理解している患者ほど継続率が高いことからも支持される。従って薬剤師の介入は、①注射手技の改善、②副作用の早期発見、③治療の必要性を理解させる、の3点で有効であることを確認した。
新作用機序ベルソムラの実態調査から見えた使用法の提案 ~ベンゾジアゼピン系薬剤から切り替え時の問題点について~
寺戸靖*1,田中直哉2,近藤澄子1,矢島 毅彦3,田中秀和1 (株式会社ピノキオ薬局1 株式会社カロン2 NPO法人Health Vigilance研究会3)
目的
ベルソムラ®はベンゾジアゼピン(以下、BZと略)とは異なる新規作用機序の不眠症治療薬として開発され、BZの依存症や筋弛緩作用の軽減が期待される。しかし、BZに比べ効果発現に時間がかかり、切り替え時に効果不十分と判断される可能性や退薬症候群に注意する必要もある。ベルソムラの治療効果と使用実態、BZから切り替え時の問題点を詳細に検討するためにその服用者ついて調査を行うこととした。
方法
ベルソムラ®発売開始の2014年11月26日から2016年3月31日までに処方された全患者を対象とした。精神疾患の有無、不眠症治療歴、併用不眠症治療薬名、副作用、中止の理由などを投薬時に聞き取った。
結果
ベルソムラ®処方患者207例中、「改善し治療終了」23例、「治療継続中」83例、「中止」73例であった。中止理由は、「効果がない」が63例、「副作用」が9例であった。副作用は、「有」25例、「無」152例、「不明」30例であり、傾眠が36%、次いで悪夢が16%であった。既往歴は、「不眠症のみ」173例、「精神疾患併発」34例であり、そのうち改善割合は、各12.1%、5.9%であった。
BZの併用は、「有」64例、「無」143例であり、ゾルピデムが18例、次いでエチゾラム13例であった。処方のされ方は、「新規処方」83例、「BZから切り替え」82例、「BZに追加」34例などであった。改善割合は、「新規処方」21.7%、「BZから切り替え」1.2%、「BZに追加」11.8%であり、中止割合は、「新規処方」20.5%、「BZから切り替え」53.7%、「BZに追加」29.4%であった。
BZの併用は、「有」64例、「無」143例であり、ゾルピデムが18例、次いでエチゾラム13例であった。処方のされ方は、「新規処方」83例、「BZから切り替え」82例、「BZに追加」34例などであった。改善割合は、「新規処方」21.7%、「BZから切り替え」1.2%、「BZに追加」11.8%であり、中止割合は、「新規処方」20.5%、「BZから切り替え」53.7%、「BZに追加」29.4%であった。
考察
BZからの切り替えは改善割合が少なく、中止割合が高いことから、ベルソムラの使用は新規患者を原則とし、BZ服用患者に使用する際には、即時切り替えよりBZの休薬法を提案したい。「精神疾患を併発群」では改善割合が低いことから原疾患の治療を優先すべきであろう。
【国内初】外用液タイプの爪白癬治療薬「クレナフィン爪外用液」の有用性検討 ~薬剤師介入による有用性向上と内服薬との比較~
篠原 祐樹1、田中 直哉2、近藤 澄子1、矢島 毅彦3、田中 秀和1 (株式会社ピノキオ薬局1 株式会社ピノキオファルマ2 NPO法人Health Vigilance研究会)
目 的
昨年本学会で、爪白癬内服治療は服薬継続の低さ(初回脱落率31%)が問題であることを報告した。外用薬は副作用や相互作用を軽減し、それらを不安視する患者の継続率低下を回避させられるが、使用法により効果が左右されることが懸念される。また、新薬であるため情報が少なく、治験では感染面積が50%を超える患者に対する検討や内服薬との比較はされていない。そこで、外用薬の有効性、内服薬との比較、薬剤師介入と継続率の関係、を調査することとした。
方 法
2014年9月2日~2016年2月29日に弊社8店舗でクレナフィンを使用開始した全患者201名に対してアンケート調査をした。
結 果
病変部位の縮小傾向を示したのは、「爪と皮膚の境界まで塗布できている」群80.6%、「1回塗布量が多い(0.06~0.19ml/爪)」群88.9%、「治療に必要と推測される使用期間継続できた」群 85.7%であった。内服薬併用の有無との相関はなかった。また、罹患部位別では、「爪根元のみ」100%、「爪先端のみ」63.2%、「爪根元から先端」81.4%であった。
初回脱落率は29.8%であり、内服薬の併用群4.3%に比べ、併用なし群は33.1%と有意(p=0.002)に高かった。ある一店舗では11.1%と、その他の店舗34.0%に比べて有意(p=0.004)に低かった。副作用は4件確認されたが、重篤なものはなかった。
初回脱落率は29.8%であり、内服薬の併用群4.3%に比べ、併用なし群は33.1%と有意(p=0.002)に高かった。ある一店舗では11.1%と、その他の店舗34.0%に比べて有意(p=0.004)に低かった。副作用は4件確認されたが、重篤なものはなかった。
考 察
クレナフィンは、罹患範囲に関わらず治療効果が示されたこと、単剤使用群と内服薬併用群で有意差はないことから、爪白癬治療に有用であることが確認できたが、内服薬同様初回脱落が多いことも示された。初回脱落率が低かった一店舗では、独自の指導箋を使用していたことから、薬剤師の介入により継続率が改善していることが示唆された。以上より、クレナフィンの有用性を高めるためには、服薬指導を塗布量、塗布方法、治療期間に関して重点的に行い、アドヒアランスを向上させ、初回脱落率を低下させることの必要性が示唆された。