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第17回薬局学会学術総会 

第17回薬局学会学術総会 (2023年10月8日・9日)

薬局学会にて、3演題発表してきました。

ベンゾジアゼピン系薬剤服用による落とし穴〜ベンゾジアゼピン眼症への薬剤師介入 の試み〜

寺戸靖

目的

ベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤の連用は視覚の高次脳機能を乱す可能性が高い。BZ薬は、BZ眼症と言われる、薬剤性眼瞼けいれんや、まぶしさ、眼痛、霧視等の症状を起こすとされる。BZ眼症は広く認知されておらず、症状があるにも関わらず、服用を継続しているケースも多い。そこで、BZ眼症について、症状調査と介入した症例を報告する。

方法

2022年2月から2023年1月に来局したBZ薬服用患者22名(男性8名、女性14名、平均年齢73.1歳、平均服用期間72.6ヶ月)に対して、眼の症状(まぶしさ、痛み、ぼやけ、眼瞼けいれん)について調査した。症状のある患者かつ医師への情報提供に同意を得た患者については、薬剤師がBZ眼症の説明後、医師へ報告、処方設計に関与した。

結果

何らかの症状があった患者は20名(90.9%)であり、症状別ではまぶしさ16名(72.7%)、ぼやけ12名(54.5%)、痛み7名(31.8%)、眼瞼けいれん6名(27.3%)であった。
症例1:60代女性、エチゾラムを264ヶ月服用。必ずサングラスをかけないと運転出来ない眼のまぶしさを感じていた。スボレキサントへ変更後、睡眠状況は良好、眼の症状改善はないが、エチゾラムによる症状悪化の不安はなくなった。
症例2:70代男性、ブロチゾラムを122ヶ月服用。眼のまぶしさ、痛み、ぼやけや眼瞼けいれんを時々感じ、不安を感じ眼科を受診したが異常なしであった。レンボレキサントへ変更後、睡眠状況は良好、まぶしさ、痛みは軽度の改善があった。
症例3:70代女性、ブロチゾラムを127ヶ月服用。眼のまぶしさ、ぼやけをいつも感じ、眼の症状は以前より気になっていた。スボレキサントへ変更後、睡眠状況は良好、まぶしさは軽度の改善があった。

考察

BZ薬服用患者の多くには何らかの眼の症状があり、不安を感じる患者が存在する。薬剤師はそのような患者に対して、BZ眼症について説明し、医師への情報提供により処方設計に関わる事が出来、重症化防止やQOLの改善に寄与出来る。
【関連資料】
第17回薬局学会学術総会 

【新薬】モイゼルト軟膏 ® の使用実態調査と継続患者へのアンケート調査

篠原 祐樹

目的

モイゼルト軟膏 ® はアトピー性皮膚炎の新たな選択肢として期待されるが、臨床データに乏しいため、使用状況と治療に影響する要因を調査することとした。

方法

【方法】2022年6月1日~翌年4月30日に来局したモイゼルト軟膏 ® 使用全患者108名の薬歴から使用状況を調査、更に2022年12月1日~翌年4月30日に来局した継続患者全18名(掻痒Numerical Rating Scale(以下、NRS)「0」6名、「2」2名「4」1名、「5」4名、「6」3名、「7」1名、「10」1名)に、使用満足度、塗布回数、塗り忘れ、ステロイド軟膏の使用希望など全19項目のアンケートを実施しNRSとの関連性を調査した。

結果

【結果】全108名の使用状況は「継続中」22.2%、「中止」7.4%、「終了(治癒)」14.8%、「不明」55.6%であった。アンケートのうち、塗り忘れは「週に1~3回程度」44.4%、「なし」55.6%だが、NRSが4以下の9名では、同33.3%、66.7%、NRSが5以上の9名では、同55.6%、44.4%であった。
塗布頻度は「毎日塗布」72.2%、「かゆみを感じたときのみ塗布」22.2%、「未回答」5.6%だが、NRSが0の6名では同83.3%、16.7%、0%であった。ステロイド外用薬について、「積極的に使用したい」16.7%、「必要なら使用したい」55.5%、「どちらともいえない」11.1%、「なるべく使用したくない」16.7%で、「なるべく使用したくない」と回答した患者のモイゼルト軟膏 ® 満足度は「とても満足している」33.3%、「満足している」66.7%であった。

考察

NRSが低い患者は、塗り忘れがない割合と症状がない場合でも毎日塗布している割合が高く、継続中と治療終了の割合は合わせて37%と初期段階での中断率が高いことから、治療初期に塗り忘れないようにすること、症状の有無にかかわらず毎日塗布させる重要性が示唆された。
「ステロイドを使用したくない」と答えた患者全員がモイゼルト軟膏 ® に満足していることから、ステロイドに抵抗感を持つ患者への新しい選択肢として有用と考える。
【関連資料】
第17回薬局学会学術総会 

乳癌ホルモン療法内服患者へのチェックシートを用いたフォローアップ〜専門医療機 関連携薬局としての取り組み〜

加藤誠一

目的

がん診療ガイドラインにおいてアロマターゼ阻害薬(以下AI)服用時には骨密度の評価を行い骨折のリスクに応じて骨吸収抑制薬を使用すると記載されている。
専門医療機関連携薬局として、がん患者への新たな取り組みはできないか検討し、AI服用患者で懸念される骨粗鬆症の対応状況等を含めた服薬状況チェックシートを実施したので報告する。

方法

2022年7月〜9月の期間に、来局した乳がんホルモン療法継続服用患者91名(アナストロゾール28名、レトロゾール33名、タモキシフェン28名、エキセメスタン2名)に対して、チェックシートを用いて副作用発現状況や服薬状況を聞き取り、その結果を情報提供した。また、一律の対応ができるよう、チェックシートには対応方法を記載した。

結果

直近3か月間で7日間以上の飲み忘れがあった患者は4名であり、服薬状況は全体的に良好であった。副作用の自覚症状有は、ほてり32名、関節痛21名、体重増加14名であり、副作用と自覚しながら治療を優先できていた。
AI服用患者において、骨粗鬆症の対応がなされていたのは、24名(定期的な検査5名、薬剤の処方19名)であり、対策の取られていない39名に対して、カルシウム摂取等のアドバイスや適度な運動、検診の受診等を説明した。何かしらの対応がとられたのは3名であり、医師からの問い合わせ(取り組みについて)1名、検診をうけて異常がなかった患者が1名、骨粗鬆症薬が処方開始となった患者が1名であった。

目的

チェックシートを用いることで、AI服用時に懸念される骨粗鬆症に対して対応がとられていない患者がいることが明らかとなった。それらの患者に対して、薬局で情報を発信することは、専門医療機関連携薬局を標榜するうえで重要な役割を担っていると考えている。専門医療機関連携薬局に対する医療機関の認知度を上げ、情報提供した患者に対する対応率をあげることが今後の課題である。