学術活動

第4回日本薬局管理学会年会(H21.7.5 東京・津田ホール)

パーキンソン病薬物治療における症状日誌の利用~作成とその成果について~

パーキンソン病薬物治療における症状日誌の利用~作成とその成果について~

町田匡俊①・近藤澄子①・村田良実①・大森利昭①・田中秀和① 田中直哉②・小川松夫③・新島健司④ (株式会社ピノキオ薬局①・株式会社カロン② 真岡中央クリニック③・新島内科クリニック④)

目 的

パーキンソン病の評価スケールは40年以上にわたり多種発表されている。そのなかで国際的に普及しているのが、Hoehn&Yahrの重症度分類やUPDRSであるが、診察時の状態を医師が評価するものであり、患者個人が日常の状態を評価するものではない。また、患者自ら評価する既存の日誌は、2段階3段階評価のものであり、評価し難いのが問題であった。
そこで、我々は症状日誌を新たに作成し、系時的に患者の状態を把握することで、医師が適切な薬剤を選択することを容易にし、薬剤師が今より踏み込んだ服薬指導を行えるようになることを目的とした。

方 法

文字の書きにくいパーキンソン病患者が簡単に記載しやすく、医師・薬剤師も解析しやすい大きさの症状日誌を独自に作成した。動きの状態を把握するため、1日を通して1時間ごとに動きの状態を数値で記載できる形式とした。「動けている・動きに支障はない」、「少し動きにくい・自力で動ける」、「なんとか動ける・動くのが大変」、「ほとんど動けない・介助が必要」、「全く動けない・体が硬まる」の5段階評価とした。 症状日誌の配布は、パーキンソン病の重症度(Hoehn&Yahrの重症度分類Ⅰ~Ⅴ)に関わらず、L-ドーパ製剤を服用している患者に対して行った。調査期間は平成19年1月から平成19年12月までとし、症状日誌の記載は1ヶ月に1回とした。症状日誌の結果を基に1日の動きの状態をグラフ化し、その折れ線グラフ下部面積(高さ[スコア1~5]×時間[1時間])を求めた。また、1日のoff時間の割合(%)を算出し、L-ドーパ製剤の吸収遅延がみられる症例についてL-ドーパ製剤を食後服用から食前服用に変更しその優位差を調査した(t検定、P<0.05)。また、 症状日誌の有効性や改善点などを検討するため、日誌を継続できた24名に薬剤師とのコミュニケーションについて、症状改善への貢献度、メリット・デメリット、記載期間、動きの評価、記載内容、改善点などのアンケートを実施した。

結 果

症状日誌を配布した42例中24例で有効回答が得られた。 そのうち、吸収遅延がみられる症例が16例存在した。L-ドーパ製剤の食後服用から食前服用に変更した16例のうち、吐き気が1例、ジスキネジアが2例生じたため継続を中止した。残り13例における改善度の比較に関して、L-ドーパ製剤食前服用の方が食後服用に比べて、動きの評価は有意に上昇した(P=0.03)。症状日誌が継続できた24例にアンケートを配布し、17例で有効回答が得られた。また、薬剤師とのコミュニケーションに関しては「話しやすくなった・質問しやすくなった」、症状日誌が「役に立った・よかった」などの意見が多数得られた。

考 察

既存の症状日誌に比べ、詳細に動きの状態を評価するために5段階評価を用いた。多くの患者で5段階評価がよいという意見が得られ、今回用いた日誌の形式は適切であったと考えている。文字を書きにくい患者が多く、A4サイズで文字や記載欄を記入しやすいよう作成したことも多くの患者で日誌の記載継続が可能となったひとつの要因と考えられる。パーキンソン病は日内・日間変動が大きいため病状を伝えることが難しかったが、患者自身が自分の現在の状態を把握することができ、医師にうまく伝えることが可能となり、服薬コンプライアンスの改善や、コミュニケーションに役に立ったと考えられる。また、吸収遅延患者の抽出が可能となり、食前服用に変更することで薬物治療へ薬剤師が参加できたと実感している。
今回作成した5段階評価の症状日誌は、患者の記載が負担となりうるが、日常の状態を把握するツールとして有用であり、治療効果を向上させるためにも、コミュニケーションの面からも効果的であることが示唆された。